研究会からのお知らせ

第17回場の言語・コミュニケーション研究会定例会のお知らせ

2015/09/22

下記のように、第17回 場の言語・コミュニケーション研究会定例会を開催いたします。ふるってご参加ください。

日時 平成27年10月18日(日)午後2:00~午後4:00

場所 早稲田大学 8号館808室

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発表者  成岡恵子先生

テーマ   「日英語の絵本における語り手の視点についての一考察」

発表要旨

本発表では、一つのストーリーを英語と日本語で言語化する際に、どのような類似点・相違点が見られるのかを調べるため、ある英語で書かれた絵本とその日本語翻訳本をデータとして用い、語り手の視点に注目した分析を行う。絵本の翻訳とは、原文の内容を把握し、その場面のイメージを頭の中で立ち上げ、その立ち上がった場面の中で、対象言語ではどう表現するかを考える必要がある(灰島2005: 6)。つまり、絵本翻訳とは一つの言語で書かれたものを、そのまま翻訳するのではなく、同じストーリーを、もう一方の言語で新たに作り上げるような性質がある。また、絵本とは繰り返し読まれることに耐えうる豊かな言語表現であり、耳で聞いた時に分かりやすいものでなければならず(灰島2005: 4)、母語話者にとって受け入れられやすい、その言語にとって自然な表現が使用されなければならない。更に、絵本とは幼い子どもが理解しやすいような単純な物語が多く、また子どもにも真似をして発しやすいような、簡単な言語表現が選択される。このような単純なストーリーを簡単なことばで言語化する際に生じる言語の特徴を観察することで、「英語らしさ」「日本語らしさ」がより鮮明になると考える。

本発表では、ストーリーの語り手の視点の位置や動きを観察するため、絵本のテキストにおける(1)キャラクターを示す固有名詞及び人称代名詞、(2)感情や感覚を示す表現、(3)語りかけ表現、に注目した分析を行った。その結果、英語では、キャラクターを示す固有名詞や人称代名詞が頻繁に使用され、それにより語り手がコンテクストの外側から場面を見て描写する視点が観察された。一方、日本語では、語り手は外側から描写する視点だけでなく、「ねむいねむい」「なんだかこわい」などの主観的形容詞表現を用い、視点がキャラクターに移り表現されている場面も多く見られた。終助詞やあいさつ表現を使用することにより、語り手自身もコンテクストに入り込み、キャラクターや読み手に語りかけるような表現方法もされていた。このような日英語の絵本における語り手の視点の違いから、絵本というジャンルにおけるテキストの中にも、両言語のスピーチ・イベントの捉え方の違い(井出1998, 2006)が反映されていることを考察し、それが子どもの言語習得に影響を与えるものとなっている可能性について論じていきたい。 (以上)

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