研究会からのお知らせ

第20回場の言語・コミュニケーション研究会定例会のお知らせ

2016/01/19

下記のように、第20回 場の言語・コミュニケーション研究会定例会を開催いたします。ふるってご参加ください。

日時 平成28年1月30日(日)午後1:30~午後4:30

場所 早稲田大学 8号館401室
(場所がいつもと異なります。ご注意ください。)

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発表者  平田真知子先生

テーマ   「時を表す表現の日英比較:英語の過去形と助動詞「た」」

発表要旨

本発表では時を言語で表現するのに、英語ではテンスとアスペクトの文法範疇で表すことができるが、日本語ではテンスやアスペクトで説明することができないことを日本語と英語を比較して述べる。データは、日英語同条件で録画録音された談話データ「ミスター・オー・コーパス」を使い、分析・考察を行う。

英語の動詞には過去形と現在形があり、過去から未来に流れるリニアーな直線のどの地点で事態が起こっているかを話し手の地点から捉える( Reichenback 1947・Comrie 1976 )。つまり、事態が起こる地点と話し手の地点の時間の関係でテンス(時制)が決まる。一方、日本語では動詞に助動詞の「た」が付くか、付かないかで時を捉えている。「た」がつけば、事態が実現したことを示し、「た」が付かなければ、事態は実現していないことになる(山口2000)。「た」を英語の過去の形態素-edに相当する過去形だとすると説明できない例が多く表れる。例えば、探していたものが見つかって「ああ、あった」“Here it is.” と言い、待っていたバスが来るのが見えて「バスが来た」”Here comes the bus.” あるいは、試着の後で店員とお客の会話、「如何でしたか」「とても気にいりました」”How do you like it?” “I really like it.” などと言う(例文はJAPANESE FOR BUSY PEOPLE による)。このように英語では現在形で表現していて「た」は英語の過去-edに相当していない。

日本語の話し手は、リニアーな直線上のどこで事態が起こったかを発話地点から述べるのではなくて、話し手のその場の今、ここ、現在、その瞬間に頭の中に浮かんだことを表現する。つまり、話し手は場にあって、その事態があった、起こったと確認できれば「た」を使う。「た」は場の中での事態実現の確認であり、客観的な過去や完了にはならない(山口2000・森田2007・熊倉2011)。日本語はテンスやアスペクトでは時を捉えることができないことを「場」の観点から述べる。

以上

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